1.データ分析の背景
1-2.データ分析は誰が行うか
図の内容:データ分析の実施主体について
データ分析を誰が主導し、誰が費用を負担するべきかについて、原則(たてまえ)と現状のギャップ、そして今後のあり方が3つの視点で整理されています。
- たてまえ(原則):
前提条件を示すべき「顧客」自身が行うのが本来の姿です。顧客が自ら分析できない場合は、費用を出してコンサルタント、エンジニアリング会社、物流メーカーなどに依頼します。しかし一般論として、顧客側がデータ分析を認識していなかったり、手法を理解していないことが多いのが実情です。
- 現状:
現実には、情報システム会社や物流メーカーなど「提案書を作る会社」が代わりに分析を行っています。これには以下の理由があります。
- 時間と経費がかかる作業を「顧客サービス」として請け負うため。
- 自社の提案を優位にするために、前提条件設定を自ら行うため。
- 前後の工程との取合いが微妙なシステムにおいて、前提条件を明確にしたいとき。
- データ分析を行うこと自体で、顧客にアピールするため。
- 今後:
物流運用会社(3PL)は、このデータ分析能力を「自社の武器にするべき」であると結論づけています。
【解説】
システム設計の基礎となるデータ分析は本来「顧客」の役割ですが、専門知識の不足から、システム会社やメーカーが顧客サービスの一環として無償で巻き取っている現状を指摘しています。しかし提案側が分析を行う背景には、自社に有利な前提条件を設定する狙いも含まれています。今後、実運用を担う3PL事業者が高度なデータ分析力を自ら備えることができれば、強力な競争優位性(武器)になるというメッセージが込められています。
別の視点:実プロジェクトにおける三者の役割分担
「誰が責任・費用を負担するか」という先ほどの視点とは別に、実際のプロジェクトを進行する現場レベルでは、「顧客(ユーザー)」「営業(提案側)」「設計(エンジニア)」の三者が、それぞれの主体性を持って共同で進めるプロセスが不可欠です。
- 顧客主体:
自社のビジネス環境や将来の展望を最も理解している立場として、過去の実績データ(生データ)の提供や、現場特有のイレギュラー業務・制約条件の提示を行います。最終的な分析結果が自社のビジネス要件を満たしているかを判定します。
- 営業主体:
顧客の「悩み」や「要望」をヒアリングし、分析の目的と方針を策定します。顧客のビジネス要件を設計側の技術要件へと翻訳し、プロジェクト全体の方向性を調整する「橋渡し(調整役)」を担います。
- 設計主体:
提供されたデータを加工・クレンジングし、実際のEIQ分析や規模計算(シミュレーション)といった専門的な処理を実行します。客観的な数値データに基づき、必要な機器の能力やシステム要件を論理的に導き出します。
【解説】なぜ三者連携が必要なのか
データ分析を「設計担当者(データサイエンティストなど)」だけに丸投げしてしまうと、現場の運用実態が加味されない「机上の空論」になりがちです。一方で、「顧客」の感覚や経験則だけで進めると、客観的根拠に乏しい過大投資や能力不足を招くリスクがあります。
三者がそれぞれの専門領域(現場の知見・プロジェクト調整力・データ解析能力)から数値を検証・評価することで、初めて「ブレのない精度の高いシステム設計の前提条件」が完成します。