7-2.物流施設におけるトラックバース庇(ひさし)の建築面積計算と5m緩和特例ガイド
本ページは、トラックバースで深い庇(ひさし)を設ける際の建築面積参入ルール、回避・軽減のための設計手法、および5m緩和特例を適用した場合の建築面積不算入シミュレーション計算方法の説明。
1. 庇(ひさし)が「建築面積」に算入される基本原則(1mルール)
トラックバースで雨天時の荷崩れ防止や作業効率化のために深い庇を設ける際、建築基準法上、庇は外壁や柱の中心線からの突出距離によって以下のように扱われます。
- 先端から1m以内の部分: 建築面積に算入されない(不算入)。
- 1mを超える部分:1mを超えた部分がすべて建築面積に算入される。
- (例: 外壁から6m突き出た庇の場合、先端1mを除いた「5m分」が建築面積にカウントされ、建蔽率を大きく圧迫する)
- 柱を設けた場合: 庇の先端を支えるために柱を立てると、その柱の中心線で囲まれた全エリアが「建築面積」になり、1mの不算入ルール自体が使えなくなります。
2. 【特例】大規模庇の建築面積緩和(5mルール)の要件
物流効率化を推進するため、施行された建築基準法施行令の改正(第2条第1項第5号の規定)により、一定の要件を満たす物流倉庫・工場においては庇の先端から「最大5mまで」建築面積に算入しない緩和措置が導入されました。
2.1 5m緩和を受けるための必須要件
- 用途制限: 工場または倉庫において「専ら貨物の積卸し業務」のために設ける庇であること。
- 上部に部屋がないこと: 庇の上部に上階(部屋や作業スペース)を設けないこと(※室外機置き場や非常用進入口などは可)。
- 不燃材料の使用: 庇全体が不燃材料で作られていること。
- 敷地境界線からの距離:
- 庇の先端から敷地境界線までの最短距離が5m以上離れていること。
- 庇の高さが、敷地境界線までの水平距離以下であること(高さ制限)。
- 面積上限: 不算入とできる庇の面積は、敷地全体で算出される建築可能面積(敷地面積 × 指定建蔽率)の1/10以下であること。
注意点: この5m緩和は「建蔽率(建築面積)の計算」にのみ適用されます。道路斜線制限や隣地斜線制限の判定では従来通り先端1m除外で計算される場合があるため、配置計画時の確認が必要です。
3. 深い庇を作る際の参入回避策・設計テクニック
建蔽率の上限オーバーを回避しながら実効深さ(濡れないエリア)を確保するための主な設計手法です。
- 「5m緩和」をフル活用したキャンチレバー(はね出し)構造: 柱を落とさず、建物本体から鉄骨トラス等で突き出す「はね出し構造」とし、先端5m分を不算入にして実質5m〜6mクラスの庇を無駄なく確保する。
- 建物の1階部分を凹ませる「インセットバース(ピロティ式)」: 庇を外に突き出すのではなく、建物本体の1階外壁部分を奥に引込ませてバースを配置する手法。上階の床がそのまま庇代わりになるため、外壁からの出っ張りとみなされず、建蔽率の計画が立てやすくなります。
- オーニング(可動式テント)・開閉式膜構造の活用: 固定式の建築物ではなく、荷卸し時のみ電動で突き出す「可動式オーニング」や、構造基準を満たした軽量な「キャンバス庇(膜構造)」を採用し、確認申請上の取り扱いを協議・確認する。
- 独立した「別棟の屋根(シェード)」として扱い、車庫緩和を使う: 建物と完全に切り離したキャノピー構造(屋根+柱)とし、一定の開放性を満たした上で「車庫・荷降ろし場」の容積率・建蔽率緩和規定を別枠で適用させる。
4. 5m緩和特例を適用した場合のシミュレーションと計算方法
5m緩和特例(建築基準法施行令第2条第1項第5号の規定)を適用する際、建築面積に算入しなくてよい庇の最大面積を算出する手順と計算シミュレーション方法です。
4.1 計算の基本ルールと3つの上限条件
5m緩和特例を適用して「建築面積不算入」にできる庇の面積は、次の3つの条件のうち、最も小さい(厳しい)数値が適用されます。
- 先端5mルール(寸法上の上限): 庇の先端から外壁側に向かって最大5m分の面積(※先端1mだけでなく、最大5m分まで丸ごと不算入可能)。
- 建蔽率枠の上限(1/10ルール):敷地全体の指定建蔽率による「最大建築可能面積」の 1/10(10%)。
- 高さ・離れ条件(敷地境界制限): 庇先端から敷地境界線までの距離が5m未満の部分は、5m緩和の対象外(先端1m除外の通常ルールに戻る)。
4.2 計算ステップ
4.3 具体的なシミュレーション例
【設定条件】
4.4 注意すべき「落とし穴」
- 柱を落とすと無効: 庇の先端や途中に1本でも柱を設置すると「5m緩和」の適用外となり、柱に囲まれた全エリアが建築面積に加算されます。
- 上階の利用制限: 庇の上部をバルコニーや室外機置き場以外の「人が作業する部屋・倉庫」として利用すると、庇ではなく「建物本体」とみなされて5m緩和が使えなくなります。