AGV/AMRの導入時における安全装置の性能要件、ISO 3691-4適合確認のチェックポイント、およびベンダー提示用RFP(発注仕様書)の記述例・チェックリストに関する総合解説です。
AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)の安全設計における世界的デファクトスタンダードがISO 3691-4:2020(無人搬送車およびそのシステムの安全要件)です。従来のガイドラインと異なり、センサー単体の性能だけでなく「システム全体として安全機能をどう担保するか(機能安全)」を厳格に規定しています。
ISO 3691-4では、搬送ロボットの「安全関連制御システム(SCS)」に対し、ISO 13849-1に基づくパフォーマンスレベル(PL)の確保を求めています。
ロボットの速度・慣性重量・走行エリアに応じて、以下の安全装置を組み合わせた多層的な保護システムを構築します。
| 安全装置 | 主な役割と設置基準 | ISO 3691-4 / 規格が求める性能要件 |
|---|---|---|
| 2D安全レーザースキャナ(LiDAR) | 主な障害物・人員検知(主安全センサー) | ・安全規格(IEC 61496 Type 3 / PL d)適合が必須。 ・速度に応じて「警告ゾーン」と「非常停止ゾーン」をリアルタイム可変制御できること。 ・床面から規定高度(一般に150mm〜200mm以下)の障害物を漏れなく検知できること。 |
| セーフティバンパー(接触検知) | LiDARの死角カバー・物理接触時の緊急停止 | ・接触時に機械的スイッチが確実に作動し、車両を直ちに停止(PL d相当)。 ・車両が完全に停止するまでの制動距離以上の「押し込み代(クッション性)」を有すること。 |
| 3Dカメラ・立体検知センサー | 上方・斜め方向の立体障害物(フォークのツメ等)検知 | ・2D-LiDARでは検知できない「床上から浮いた荷物」や「人の頭部・上半身」の空間検知。 ・環境光(日光や照明の乱反射)による誤作動に強い耐性を持つこと。 |
| 非常停止ボタン(E-STOP) | 手動による緊急全停止 | ・ISO 13850に適合した赤色ボタン+黄色下地構造。 ・車両の全方向からアクセスしやすい位置(前後・左右等)に配置され、操作時に即座に動力遮断(Category 0または1停止)を行うこと。 |
ISO 3691-4では、単にセンサーを付ければよいわけではなく、「ロボットが停止するまでに必要な距離」と「センサーの検知エリア」の一致を定めています。
海外製または国産のAGV/AMRを調達・導入する際、カタログ上に「ISO 3691-4適合」と記載されていても、「第三者認証の有無」「ロボット単体だけでなく現場運用を含めた適合か」を見極めることが最も重要です。
単なるメーカーの自己宣言(自主検査)か、信頼できる第三者認証機関による認証かを確認します。
機器がISO 3691-4の安全技術要件をハードウェアレベルで満たしているか実機で確認します。
| チェック項目 | ISO 3691-4に基づく確認内容 |
|---|---|
| 安全スキャナ(LiDAR)の選定 | 使用されている2D-LiDARが「安全用(IEC 61496 Type 3 / PL d適合品)」であるか(※一般の産業用計測LiDARは不可)。 |
| 非常停止スイッチ(E-STOP) | 黄色下地に赤色ボタン構造で、ボタンを押した際にソフトウェアを介さず物理的に主電源(モータ動力)が遮断(Category 0/1停止)されるか。 |
| 荷崩れ・高さ方向の検知 | 3Dカメラや超音波センサー等で、床上から浮いた荷物や上部の突起物を正しく検知できるか(2D-LiDARの死角対策)。 |
| 最大積載時・最高速度での制動 | 荷物を満載し最高速度で走行中、LiDARが人を検知して停止するまでの距離が「検知ゾーンの長さ以内」に収まっているか。 |
| 手動リセット機構 | 非常停止や人検知後に障害物がなくなった際、自動で再発進せず、安全確認後の手動リセット操作を挟まないと再起動しない構造になっているか。 |
ISO 3691-4は「ロボット単体」だけでなく「システム全体(設置環境)」までを含める規格です。 機器が適合していても、現場のマップ設定やレイアウトが不適切であれば適合違反(事故リスク増)となります。
導入検討時にシステムインテグレーター(SIer)やベンダーへ提示・確認を求めるべき確認事項です。
AGV/AMRの導入時にベンダーへ提示する提案依頼書(RFP)や発注仕様書において、「ISO 3691-4適合」および「現場安全要件」を曖昧にせず、具体的な要求性能・納入物として明記するための記述例とチェックリストです。
【条項名:自動搬送ロボット(AGV/AMR)システムの安全適合および機能要件】
ベンダー選定時および仕様書受領時に確認すべきチェック項目です。
| 確認区分 | チェック項目 | 要求内容・提出確認物 |
|---|---|---|
| 文書・証明 | 第三者認証の確認 | CEマーク/DoC、または第三者認証機関(TÜV等)の発行するISO 3691-4適合証明書の写しが提出可能か |
| 機能安全の計算根拠 | ISO 13849-1に基づくPL dの機能安全計算結果(SISTEMAレポート等)が示されているか | |
| リスク評価書 | 車両本体および現場環境を含めた「リスクアセスメント(RA)報告書」が納入物に含まれているか | |
| ハードウェア | LiDARの規格選定 | 搭載LiDARが汎用計測用ではなく「安全規格適合品(Type 3/PL d)」であるか |
| 制動距離と減速 | 満載・最高速度からの「非常停止距離」が、LiDARの検知エリア内で完結しているか | |
| 接触防護(バンパー) | LiDARの死角やバンパー接触時に、物理的に緊急停止する構造になっているか | |
| システム・運用 | ゾーン設定・離隔 | 逃げ幅0.5m未満のエリアに対する「自動減速・徐行プログラム」が実装されているか |
| 連動・インターロック | 自動ドア、防火シャッター、VMC等との通信途絶時に「安全側(停止)」へ倒れる設計になっているか | |
| 運用支援・トレーニング | 設置後の「安全運用教育プログラム」および「レイアウト変更時の再検証手順書」が提供されるか |